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どうして人は花が好きなのか、なぜ花に意味を持たせるのか。
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清めの時とアドベントリース

清めの時とアドベントリースイメージ

 早いもので、もうクリスマスも間近です。特に年末にかけての時間の流れは速くなるいっぽう。それも楽しいイベントが目白押しだからでしょうか。楽しいクリスマスにむけての準備のときがアドベント。日本ではあまり意識はされませんが、キリスト教徒の多いヨーロッパでは大切な期間とされています。今回はそんなアドベントならではのアドベントリースの話をいたしましょう。

 日本では待降節と呼ばれるアドベント。文字通り救世主の降臨を待つ節目というわけです。5世紀あたりからキリストの誕生日であるクリスマスを迎えるに際して罪を悔い、身を清めるための期間が定められました。アドベントはクリスマス直前の4回の日曜日を含む4週間とされていて、この期間中人々は暴飲暴食を控え、女性は編み物などの手作業に専念し、家族で讃美歌を歌ったり、キリストにまつわる聖なる物語を読みあったりしました。

 このアドベントを印象付けたのがアドベントリース。4本のキャンドルを挿した花輪を平たく卓上に置いたものです。4つのキャンドルはアドベント期間中の4回の日曜日を表しています。第1日曜日には1本のキャンドルに火を灯し、第2日曜日には2本のキャンドルに火を灯しと、リースはクリスマスに向けて徐々に光を増していきます。普通、日曜日の朝食時にキャンドルを灯し、一家でクリスマスへのカウントダウンを楽しむのです。特に4本目のキャンドルに火が灯るとクリスマスはもう目と鼻の先。いやが上にも盛り上がったことでしょう。

 このアドベントリースの登場は意外と最近のこと。リース自体には古くから大切な意味合いが付され、クリスマスをはじめ様々な祭に欠かせないものでした。古くからヨーロッパの人々は枝や茎を絡めて輪状にし、そこに季節の花を入れたリース作りに勤しんできました。リースはその形状から命の循環を意味したり、永遠を意味したりするものでした。リースがアドベントと結びついたのは19世紀半ばのドイツの港町ハンブルクでした。ヴィヒェルン牧師という聖職者が自ら設立した少年院にてアドベント時期にクリスマスへのカウントダウンの意味で少年らと共に教会内のキャンドルに段階的に火を灯し始めたことが広まり、クリスマスのシンボル的存在であるリースとキャンドルとが結びついたのです。

 人々の幸せへの願いが込められたリースに、過ちを犯してしまった少年らに対するヴィヒェルン牧師の愛情がブレンドされ生まれた素敵な花文化、それがアドベントリースなのです。

フローリスト連載2013年12月号より

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