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【第九回】秋の七草

【第九回】秋の七草イメージ

 立秋を迎えるともう秋。今年の立秋は8月7日ということで意外に早く秋になってしまうという感じです。現在の七夕は7月7日の行事ですが、旧暦では8月の初旬に行なわれていましたので、七夕は実は秋の行事だったというわけです。七夕には古くから、秋の七草を器にいけたものを室内に飾る習慣がありました。七夕に7つの花。これは古来7という数字が聖なる数字とされ、7つのものがまとまることによって不思議な力が生じ、厄除けの効果が高まると信じられてきたことに由来します。

 七夕に飾られた7つの花が秋の七草と呼ばれているもので、奈良時代初期の歌人である山上憶良(やまのうえのおくら)(660年?~733年?)がすでに秋の七草について言及していて、それらが萩、尾花、葛、瞿麦、女郎花、藤袴、朝顔となります。これを現代風に言いかえるとハギ、ススキ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウとなります。最後の朝顔が実はキキョウだったのは、憶良の時代にはアサガオはまだ日本には無く、憶良が朝一番に目にした花がキキョウだったことからこの名前になったと言われています。

 ハギは奈良時代の歌人の間で最も人気の高かった花。『万葉集』(759年以降に成立)にはおよそ140首あまりもの歌に詠まれ、これは当時人気の高かったウメを凌いで第一位です。実は秋にも花見が行なわれ、人々はハギの花を観賞していたのです。『万葉集』では花見はサクラと結び付けられてはおらず、ハギの花と結び付けられていたのです。控えめだけれども、凛々しく美しい花が日本人の感性とマッチしたのでしょうか。

 ススキは十五夜でも人気ですが、その姿が稲穂を連想させることから、秋の収穫時期に相応しい植物として意識されたようです。またその精悍な形状から古来魔除けの役割を担ってきたのです。

 クズはその根から葛粉が採れ、それを原料に葛根湯などの漢方ができます。そんな薬効がありがたがられて大切な七草に加えられたと考えられます。

 日本のナデシコは花弁に深く入った切れ込みが印象的です。その優美な姿がしばしば女性の美しさと重ね合わされました。こうした印象から日本女性らしい人のことを大和撫子と呼ぶようになったのです。

 オミナエシの黄色い蕾は粟を思い起こさせます。米飯が男飯と呼ばれていたのに対して粟飯は女飯と呼ばれていました。オンナメシがいつしかオミナエシに転化したという説もあります。

 フジバカマは原産国の中国でありがたがられた花。芳香が強く、中国ではその若葉を髪に挿したり、袋に入れて携行されたりしました。そんな好ましいイメージが日本にも伝えられたのでしょう。

 その由来はまちまちの秋の七草ですが、秋の暮らしを彩る花として欠かせない風物詩となっているようです。たしかにその姿を見ただけで秋の深まりを今でも感じることができるのです。

フローリスト連載2012年9月号より

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